はじめまして、ecbeing入社3年目のヤマコフです。
配属から今年の3月まではレビューサービスReviCoの開発に携わっていましたが、
4月から予約管理システムRESOMOの開発チームに参画しています。
いずれもecbeing社で作られた製品といっても作りが全く違うため、
はじめは慣れないシステム構成に苦戦していましたが、
2か月ほど経ってRESOMOの開発にも慣れてきました。
この記事ではその中で気になった違いの一つである、 データベースの主キーの生成方法の違いについて紹介します。
はじめに
データベースにおいて、主キーは各レコードを一意に識別するための項目です。
主キーは適切に設定しないと、データベースのパフォーマンスや整合性に大きな影響を与えます。
主キーの生成にはいろいろな方法があり、ReviCoとRESOMOでも異なる生成方法を使用しています。
今回は主キー生成の代表的な方法であるIDENTITY列、シーケンス、およびGUIDについて
利点と欠点、使用例を説明し、それぞれの方法の比較をしようと思います。
主キーの生成方法
今回比較する主キーの生成方法について、簡単に特徴をまとめると以下のようになります。
- IDENTITY列: テーブル定義内で自動的に増加する数値を生成する列。
- シーケンス: 連続した数値を生成するデータベースオブジェクト。
- GUID: グローバルに一意な識別子。
ここからはそれぞれの主キーの生成方法について詳しく見ていきます。
IDENTITY列はSQL Server固有の方法、他の2つは一般的な方法ですが、
今回はいずれもSQL Serverを例に挙げて説明します。
IDENTITY列
IDENTITY列は、SQL Serverで連番の主キーを自動生成するために使用されます。 テーブル定義内で設定でき、行が追加されるたびに自動的に連続した数値が生成されます。 テーブル内で一意な値になることが保証され、設定も非常に簡単なため、 単一テーブルでのシンプルな主キーの生成方法としてよく利用されます。
IDENTITY列の利点と欠点
利点:
- 設定の簡単さ: テーブル定義内で簡単に設定できる。
- 自動管理: 値の生成と管理が自動的に行われるため、外部の管理が不要。
欠点:
- 初期設定後の変更が困難: テーブル定義内で一度設定すると変更が難しい。
- 再利用が困難: 一度使用した値を主キーに再利用するのは困難。
- 複数テーブルでの一貫性がない: 複数のテーブルで一貫した主キーを生成することが難しい。
IDENTITY列の使用例
IDENTITY列を使用してテーブルにレコードを追加する方法を説明します。
まず、IDENTITY列を使用してテーブルを作成します。
この例では、ID 列が主キーとして設定され、1から始まり1ずつ増加します。
CREATE TABLE MyTable ( ID INT IDENTITY(1,1) PRIMARY KEY, Name NVARCHAR(50), Age INT );
作成したテーブルにレコードを挿入します。 IDENTITY列を使用する場合、ID 列の値は自動的に生成されるため、主キーを指定する必要はありません。
INSERT INTO MyTable (Name, Age) VALUES ('John Doe', 30);
シーケンス
シーケンスはデータベースオブジェクトとして独立して存在し、連続した数値を生成するための仕組みです。 SQL Serverを含む多くのデータベース管理システムでサポートされています。 テーブルとは独立して定義されるため、複数のテーブルやカラムで共有できます。 また、IDENTITY列に比べて柔軟な設定や値の取得が可能です。
シーケンスの利点と欠点
利点:
- 再利用性: 一度作成したシーケンスを複数のテーブルやカラムで再利用できる。
- 設定の柔軟性: 増分値や開始値などを自由に設定できる。
- 複数テーブルで一貫性が保持される: 複数のテーブルで一貫した主キーを生成できる。
欠点:
- 外部管理が必要: シーケンスの管理や値の取得がテーブルに比べて手間。
- 設定がやや複雑: 設定項目が多く、理解するまでに時間がかかる場合がある。
シーケンスの使用例
シーケンスを作成し、それを利用してテーブルにレコードを追加する方法を説明します。
まず、シーケンスを作成します。このシーケンスは、10000から始まり、1ずつ増加する整数を生成します。
CREATE SEQUENCE MySequence AS INT START WITH 10000 INCREMENT BY 1;
次に、シーケンスを使用するテーブルを作成します。
CREATE TABLE MyTable ( ID INT PRIMARY KEY, Name NVARCHAR(50), Age INT );
シーケンスから値を取得し、その値を主キーとしてレコードを挿入します。
シーケンスから次の値を取得するにはNEXT VALUE FOR
関数を使用します。
INSERT INTO MyTable (ID, Name, Age) VALUES (NEXT VALUE FOR MySequence, 'John Doe', 30);
GUID
GUID (Globally Unique Identifier) は、グローバルに一意の識別子です。
GUIDは128ビットの値で、通常は32桁の16進数で表現されます。(例:f73e77e5-3d51-4bcd-81a7-9f94f8fbc7e2
)
値が重複する確率は限りなく低いため、分散システムやクラウド環境などで広く使用されています。
GUIDはデータベースだけでなく、アプリケーション内で生成して使用することも多いです。
GUIDの利点と欠点
利点:
- グローバルな一意性: 複数のシステム間で一意性を保てる。
- 分散システムに適している: クライアント側で生成しても一意性を保てるため、分散環境での使用に最適。
- 推測がほぼ不可能: 複雑な値であるため、連続する値の推測がほぼ不可能。
欠点:
- サイズが大きい: 128ビットの値であるため、ストレージとインデックスのサイズが大きくなる。
- 性能の影響: 挿入や検索の性能が、連続した整数よりも劣る場合がある。
GUIDの使用例
GUIDを表現する UNIQUEIDENTIFIER
型を使用して、テーブルにレコードを追加する方法を説明します。
まず、GUIDを主キーとして使用するテーブルを作成します。
この例では、ID 列を UNIQUEIDENTIFIER
型とし、デフォルト値として NEWID()
関数を使用しています。
CREATE TABLE MyTable ( ID UNIQUEIDENTIFIER DEFAULT NEWID() PRIMARY KEY, Name NVARCHAR(50), Age INT );
作成したテーブルにレコードを挿入します。
デフォルト値として NEWID()
関数を使用する場合、ID 列の値は自動的に生成されるため、主キーを指定する必要はありません。
INSERT INTO MyTable (Name, Age) VALUES ('John Doe', 30);
主キー生成方法の比較
ここまで、主キーを生成するための3つの代表的な方法(IDENTITY列、シーケンス、GUID)について説明してきました。 最後にそれぞれの方法の特徴、利点、欠点を比較し、それぞれの方法がどのようなシチュエーションに向いているかをまとめます。
比較表
特徴 | IDENTITY列 | シーケンス | GUID |
---|---|---|---|
概要 | テーブル定義内で自動増加 | 独立したオブジェクト | グローバルに一意 |
利点 | 簡単な設定、自動管理、効率的 | 再利用性、設定の柔軟性、複数テーブルで一貫性が保持される | グローバルな一意性、分散システムに適している、推測がほぼ不可能 |
欠点 | 初期設定後の変更が困難、再利用が困難、複数テーブルでの一貫性がない | 外部管理が必要、設定がやや複雑 | サイズが大きい、性能の影響 |
それぞれの方法が向いているシチュエーション
IDENTITY列
IDENTITY列は設定が非常に簡単で、SQL Serverが自動的に一意の値を生成してくれるため、 単一テーブル内で連続した数値の主キーを効率的に生成できます。シーケンス
シーケンスは独立したオブジェクトとして存在し、複数のテーブルで共有できるため、 一貫性のある主キーを複数のテーブルで生成する必要がある場合に適しています。GUID
GUIDはグローバルに一意であり、クライアント側で生成しても重複しないため、分散システムやクラウド環境での使用に最適です。 データベース間での一意性を保つ必要がある場合にも有効です。
まとめ
この記事では、データベースの主キーを生成する代表的な方法であるIDENTITY列、シーケンス、GUIDについて比較しました。 それぞれの方法に利点と欠点があり、使用するシチュエーションや要件に応じて最適な方法を選ぶことが必要になります。 プロジェクトの要件に最も適した方法を選択し、適切に実装することで、効率的で信頼性の高いデータ管理を実現しましょう。
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